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「障害者雇用水増し問題について」要望書を厚労省に提出しました

                             2019年1月15日
厚生労働大臣
根本 匠 殿
            障害者雇用水増し問題について

                  一般社団法人
                   全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
                          理事長 新谷 友良

 障害者雇用を促進するための障害者雇用率制度の運用において、国・地方自治体の障害者雇用数が水増しされていた事態は、多くの障害者の雇用を目指す制度の基礎となる障害者の数を偽っていたものであり、どのような言い訳も許されるものではありません。

 我が国の年金も含めた多くの障害者福祉サービスは障害者手帳の保持が条件になっています。しかし、障害者認定の基準は国際的にみて非常に厳しく、聴覚障害を例にとれば、世界保健機関(WHO)報告が人口の6.5%を聴覚障害者としながら、我が国の聴覚の障害者手帳保持者は34万人(人口の0.3%)しかいません。このように、障害者福祉サービスの受給対象者を厳しく制限しながら、制度の目標数字を達成するために障害者の範囲を操作する国の対応は、我が国の障害者施策の根底を揺るがすものと考えます。

 民間企業の障害者雇用率は昨年から2.2%となっています。この数字が妥当かどうか様々な議論がありますが、例えばフランスは6%です。しかし、フランスでは障害者雇用における障害の定義が「1つ又は複数の身体・感覚・精神・知的機能を理由とする、障害者がその環境において被る活動の制限または社会生活への参加の制限」とされており、障害者の範囲を広くとらえています。また、障害者の雇用・就労における情報保障の整備など、提供すべき合理的配慮が非常に具体的に規定されています。

 「働き方改革」を待つまでもなく、働く意欲のある障害者には広く働く場が与えられなければなりません。多くの障害者の雇用を民間企業や国・自治体で進めていくためには、①障害者雇用における「障害者の範囲」を障害者基本法の定義に沿ったものに改める、②雇用・就労における「合理的配慮の提供」を行政機関等のみならず事業者においても法的義務とするように障害者差別解消法を改正することが求められます。

 政府の国会答弁では、このような問題点については「労働政策審議会の障害者雇用分科会においてその在り方を検討する」とされています。しかしながら、障害者雇用分科会の構成は、委員20名中障害者団体の委員は4名であり、また障害者委員には聴覚障害者は含まれていません。このような委員構成で、前述の①、②の問題が十分に検討されるとは到底思えません。
 わたしたち、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会はこれら課題について意見を出す場を設けていただきたいと何度か要望いたしましたが、その要望についての真摯な回答をいただいておりません。中途失聴・難聴者の多くは障害者雇用の枠外で就職し、適切な配慮のない状態での就労を強いられております。そして、適切な配慮があれば、その能力を十分に発揮し、社会に対して貢献すると同時に、個人としても生きがいを持って毎日の生活ができます。今回の問題の解決のために、私たちが「障害者雇用分科会」や「国の行政機関における障害者雇用に関するアドバイザー会議」に参加し、意見を出す機会を与えていただくように強く要望いたします。

要望書は中央対策部のページにございます