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【声明】障害者雇用水増し問題について

 

障害者雇用水増し問題について(声明

2018年9月3日

      

一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
理事長 新谷友良

 障害者雇用を促進するための障害者雇用率制度の運用において、国・地方自治体が対象外の職員を障害者の範囲に組み入れて、雇用率を達成したように報告していたことが判明しました。多くの障害者の雇用を目指す制度おいて、その基礎となる障害者の数を偽っていたことは、どのような言い訳も許されるものではありません。

 我が国の年金も含めた多くの障害者福祉サービスは障害者手帳の保持が条件になっています。しかし、障害者認定の基準は国際的にみて非常に厳しく、聴覚障害を例にとれば、世界保健機関(WHO)報告が人口の5%を聴覚障害者としながら、我が国の聴覚の障害者手帳保持者は34万人(人口の0.3%)しかいません。このように、障害者福祉サービスの受給対象者を厳しく制限しながら、他方自分たちが作った制度の目標数字を達成するためには平気で障害者の範囲を操作する国の対応は、我が国の障害者施策の根底を揺るがすものと言わざるを得ません。

 民間企業の障害者雇用率は今年から2.2%となっています。この数字が妥当かどうか様々な議論がありますが、例えばフランスは6%です。しかし、フランスでは障害者雇用における障害の定義が「1つ又は複数の身体・感覚・精神・知的機能を理由とする、障害者がその環境において被る活動の制限または社会生活への参加の制限」とされており、障害者の範囲を広くとらえています。また、障害者の雇用・就労における情報保障の整備など、提供すべき合理的配慮が非常に具体的に規定されています。

「働き方改革」を待つまでもなく、働く意欲のある障害者には広く働く場が与えられなければなりません。多くの障害者の雇用を民間企業や国・自治体で進めていくためには、

①障害者雇用における「障害者の範囲」を障害者基本法の定義に沿ったものに改める。
②雇用・就労における「合理的配慮の提供」を行政機関等のみならず事業者においても法的義務とするように障害者差別解消法を改正する。

ことが求められます。

「雇用率が達成されれば、障害者雇用の問題が解決」されるという認識が今回の問題を生んでいます。「障害者の範囲」、「合理的配慮の提供」の課題を併せて考えることで、今回の問題を障害者の雇用・就労問題を前進させるきっかけとすることを求めます。

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